【前編】第12回干からびラン 上越〜長野〜美ヶ原高原 2018/5/4~5/5
序章 機材トラブル
毎年ゴールデンウィークに行われているイベント、干からびラン。
昨年2017年に初めて参加し、二年連続の出場になる。
干からびランとは、30人くらいの参加者が、新潟県の上越から静岡県の浜松の約450kmを、いくつものの山脈を越えながら超えてしまおう、という狂った企画だ。
制限時間以内に走破しなければならなく、まともに寝れない。
参加者はほぼ大学生で、理系学部が多い。
とにかく過酷で狂っているイベントなのでそこらのウェイ大学生は1人もいない。
ドMの集まりだ。
昨年は浜松からのスタートだったので、今年は上越から逆スタート。
浜松スタートを裏干からびと呼び、今回は表干からびランになる。
干からびランは、機材トラブルから始まる。
某大手D自転車にメンテナンスをお願いしたら、スプロケットのスペーサー(歯車と歯車の間の隙間を調整する輪っか)を一枚忘れた状態で渡される。
出発直前に発覚するも、すでに夜、営業時間外で詰む。
結局、北海道の釧路で出会った東工大のチャリダーがスペーサーを貸してくれるとのことで、車を飛ばして受け取った。
D自転車、まじで激おこだからな。(この後あまり悪びれる様子もなく、取りに来てくださいというクソ対応だった。出張修理サービスをやっている会社なのに、平気で取りに来いとかヘラヘラして言うんだぜ。)
上越市には朝の5時30分集合。
スペーサーがないとまともにギア変速ができず、こういう山岳中心のツーリングでは変速が命なのでほぼ走行不能。
たまたま北海道は釧路で出会った東工大の自転車のりと連絡がつき、夜中に車を飛ばして取りにいった。
ブツを受け取り、準備が完了した頃にはとっくに、新幹線を逃していた。。。
結局22歳にして、お父様、お父様、とこんな時だけ機嫌をとって、上信越道を北に進めてもらった。
新潟県に入ると、まさかの雨!!
出走開始から悪天候に見舞われるとは不幸な話だが、
参加者全員同じ条件下に置かれるだけ心強い。
スタート 新潟県上越市
今回は去年のゴール地点がスタート地点になる。
去年も朝に雨が降っている中集まった。
上越市は常に雨が降っているイメージである...。
やはりみんな前日から上越入りしていて、この近くにある銭湯 上越の湯に深夜泊して集まっていた。
この上越の湯、去年は実質のゴール地点に指定されていたのだが、なんと2018年の8月に閉店してしまっていた。
そもそもこの温浴施設、何度かテナントを変えてきたのだが、また閉店したのだ。
そんでまたテナント変わって、七福の湯 上越店に生まれ変わったそう。
今回の装備は中華サドルバック (大)、中華フロントバッグ、中華トップチューブバッグ、中華ドリンクホルダーというMade in CHINA装備。
これに加えてヒートテック、サイクルジャージ(夏用上下)、ゴアテックスレインウェア、シューズカバー、30Lバックパック、反射ベスト、ユニクロウルトラダウン、ビンディングシューズ、ダウン寝袋。
ライトにはVOLT200、VOLT400、閃、エコノムフォース。
去年の参加時から成長したことは、
・反射ベストが工事現場のおっさんからそれっぽいやつに進化
・寝袋のサイズが去年から1/4サイズになった
・登山用リュックから普通のバックパックになった
・飲み物が3本入るようになった
・ライトが山の中でも普通に走れるレベルにまでなった
簡単に言えば荷物がかなり減った。
「去年みたいにクソでかいリュック持ってこないんですかw」と聞かれたくらいなのだ。。。
なんてったって55Lの登山用のやつ使っていたからな。
AM6:00 開会式。
今回は去年と違ってOBなどもおらず、大学生のみの参加だった。
今年も女子参加者が1人。
チャリで日本横断することくらい女子大生でも気軽に参加できるので、興味のある暇な女子大生はエントリーしてみてほしい。
開会式は去年よりもサラッとしていて、すぐにみんな出走を始めた。
ここで今回のルートを紹介しよう。
・戸隠
・茶臼山
・美ヶ原高原
・霧ヶ峰
・杖突峠
・分杭峠
・兵越峠
をせめて、静岡県浜松市、中田島砂丘の風車公園で太平洋ゴールとなる。
今回は渋峠〜草津温泉が噴火通行止めの影響で代替ルートを使う。
去年と違い、高原地帯を上り下りさせられ、更には絶景ポイントがそこまでない。
なにせ雪が残る渋峠を拝めないのは辛い...。
県道579号を進む。
国道18号はしばらく自転車走行禁止なため地図を何回もチェックしながら走っていた。
地方都市のカラオケといえばまねきねこ。
カラオケ館もビッグエコーも地方主要都市の繁華街にしか展開していないそう。
信号がかなり多く、どれほど飛ばしても後続の集団に追いつかれるため、序盤は流し気味にすることに。
海から山に登っているため、徐々に上り坂になっていく。
AM6:51(+0:51) 上越妙高駅。
新幹線停車駅の周り何もないところの代表。
ここで国道18号と交差するもまだ自転車走行禁止。
国道292号〜県道584号線
北アルプスにはGWでもまだまだ雪は残っていた。
じわりじわりと上り坂が続く。
悲しいことにここからずっと山を登り続けないといけないのだ...。
海抜0メートルから700mまで
黒姫高原を目指して。
ここからは昨年と異なり新ルート。
海から約30kmほど内陸の方まできたが、住所はなぜだか妙高市と上越市を行ったり来たりする。
この内陸側の住所は” 上越市中郷区”という政令都市じゃないのに区が出てくるという謎現象が起こる。何言ってるか分かんねぇな。
地域自治区(対:行政区)といって、兵庫県姫路市や北海道せたな町のように合併してできた市を細分化するために作った区役所を持たない区らしい。
いや、そんなら合併しなくても良くない?
ちなみにこの辺が上越と妙高をいったりきたりするのは、中郷区が上越市の中で飛び地(四方八方を妙高市に囲まれている)だからだ。もう妙高市にしてもよくね。
ここでようやく国道18号の自転車走行が許されるようになる。
ここまであまり各チーム、差は広がっていないが、船見公園でダラダラしていたせいで、
後方集団に自分がいることが分かった。
標高が上がっていくうちに雨が土砂降りになっていくものの、
他チームの人と喋りながら走っていたのでそこまで苦痛には感じなかった。
そしてチームメイト(去年と同じ)はむしろ自分よりペースが落ち込んでいたので、ああ今年は自分の方が余裕があるな、と思っていた。
この時は。
ここで相方を紹介しよう。
そもそもこの干からびランは、同じ大学の人同士でチームを組むんだけど、僕は大学に友達がいないので、他大学2つ下の男が相方だ。
彼は元々六本木のとあるラジオ局による大学生コミュニティサークルで知り合ったんだけど、峠を登るのがかなり早い。
去年の干からびランでは長野の山奥(スズラン峠/白樺高原)で自分のことを約40km置いていった。今回はどれほど置いていかれるだろうか。
妙高高原・黒姫高原
ゴールデンウィークだっていうのに、気温は9度。
こないだまで半袖ポロシャツで過ごしていたというのに、現在全身防備中。
ちらほら青空は見えてきているのに、大雨。
景色が地方都市から高原リゾートに変わってきている。
特に目立つのは、
やたら頻繁に出てくる〇〇博物館・美術館の看板たち。
リゾート地に行くとよく、おもちゃ、ガラス、トリックアートがありがちだが、
野尻湖周辺で、何度も化石が発見されているからだ。
天気の変動が激しい。
さっきまで強烈に降っていた雨は上がり、いつの間にかジリジリと日差しが注いでいた。
しばしば通りかかるコンビニで、干からびランの参加者と思われる人たちが休憩しているのが見える。
この干からびラン、常に自分のチームが最下位なのではないかという不安に駆られながら走るため、
まだまだコンビニに自転車がたくさん停まっていると安心する上に、ここで差をつけなければと休むのを我慢して漕ぎ続ける。
そう、この干からびランは休憩と睡眠をいかに削るかが問われる
美しくカーブを描いた高架橋をゆるく登り
長野県突入
AM 8:32(+2:32)長野新潟県境
信濃町に入る。読み方は東京のしなのまちと一緒。
小中学生の時、何度もスキー合宿で連れてこられた場所。
小学生の頃って、観光バスで信濃町に来るまでに、バスレクリエーション(バスの中でやるお楽しみ企画)を考えなければならなかったり、スキーで疲れ切った体を叩き起こして百人一首大会を本気でやったりしたんだけど、
あの頃ってよくそこまでできたよな〜
そんなことを考えていた。バスの中で寝ていたら怒られるし、百人一首大会で負けたらクラス全員で悔し涙を流さないといけないし。
絶対にそんなこと今ではできないんだけど、教育従事者って歳を取っても決して手を抜かないから大変だと思う。
隣の橋は上信越道。
山を切り開けなかったのか、国道も高速も高架道路になっている。飛び降り自殺とかありそうで怖い。
でもこんな、橋の下に広がる集落とか見るの結構好き。
リアル村社会。
上越市を出てから上り坂は全く終わらない。
頻繁に出てくる登坂車線の標識にウンザリしてくる。。
くそ怪しい激安ラブホテル。
高架橋が終わり、斜度が緩くなると、周囲がガラッと開ける。
ナウマンゾウの像が現れたな、と思えば
ナウマンゾウ発掘地という交差点名だった。
AM9:06(+3:06) 黒姫駅周辺
すっかり天気も良くなって、相方を遠くに置いてきてしまったので、
ようやく1回目の休憩。
野尻湖に来てもなかなか休憩する場所が見つからなくて、やっと見つけた自販機でしばらく待っていた。
暇だから、いろんな人を撮ってみる。
スタートから約45km、標高700mの地点ではまだまだみんな
余裕の表情。
相方が戻って来たので再開。
白樺が増えてきたな〜なんて思っているのも束の間、
早速次の峠が現れる。
黒姫山。
さっきまで晴れていたはずなのにまた雨がポツポツと降り始める。
暑かったり寒かったりで、ウェアの着こなしが難しい。
戸隠
県道36号線。
渋峠に登れない分、難易度の調整で国道から外れた
激坂ルートが指定されていた。
これまでの登りはまだまだ序の口だった。
登り勾配10%とか平気で出てきたりする。
もう可愛くないんだからぁ...
車通りも全然ない白樺道にヒィヒィ言いながら
長野市に。
悲しいことに長野市はかなり範囲が広くて、市街地からこんな山奥にまで範囲は広がる。
困った...退屈すぎる...
気がつけばこの辺が戸隠(とがくし)エリアにいることを知る。
戸隠といえば、そば。
腹が減っていたが、食事に時間も金もかけたくない、干からびランだからね。観光ツーリングじゃないし。
でもこういう時に限ってコンビニがない。
更に最悪なことに、雹が降り出した。
気温は1度。ゴールデンウィークなのに。
しかし、旅館や蕎麦屋が立ち並ぶエリアに入ると、大渋滞。
AM10:40(+4:40) 戸隠神社。
周辺は大渋滞だった。
ずっと車で並んでいるときに
大勢の自転車集団が山から降りてくるのはどういう風に彼らからは見えるのだろうか。
が、山を下りきると観光地の景色はどこへやら。
急勾配の下り坂を猛スピードで下りていくと
地元の人しか使わないような道に出る。というか、地元のおばあちゃんたちに目で追われていた。こんな光景珍しいんだろうな、そりゃあ。
これでも県道から外れていないが、あまりにも分かりにくいため他のチームの人と
合ってるよね?
と確かめ合いながら走っていた。
地蔵峠 part.1
県道36→76→86
戸隠の山から降りてしばらくすると、また峠をのぼらなければならないことが判明。腹が減ってもどこにもコンビニは現れないし、とにかく寒いし、相方は全然いないし一回バス停の中で仮眠することにした。
さすがは雪国のバス停、なかには薄汚れた座布団がしかれていて、寝るにはちょうど良かった。
バス停の中で持ってきたハッピーターンをボリボリ食べていると、今度は土砂降りの雷雨に。
相方が来てからもしばらく雷は落ち続け、諦めて昼寝した。
PM12:52(+6:52) 起床
雷に打たれて死ぬくらいなら寝たほうがいいんだよ、きっと。
雨が上がると、再び山登りへ。
この車一台通るかぐらいのこの林道も、一応県道だ。
かなりキツい勾配を登りつつ、広がるのはおばあちゃん家の裏庭みたいな光景。
おじいちゃんが持っている裏山みたいな。
ちなみにここの県道は冬になると閉鎖されるらしい。
そもそもこの道を使う人は少ないが。
ムムム、景色がつまらない。
雨上がりの照り返しが暑いこと、携帯の電波が繋がらないこと、ただそれだけ。
PM1:34(+7:34) 地蔵峠(陣馬平山)
今回は代替ルートが設定されたことにより”地蔵峠”が2つ出てくる。
名前の通り山頂に地蔵が立っているだけで、達成感があるわけでもないが、峠の勾配は全く可愛くない。
絶景が広がっているわけでもなく。
あの石碑の近くにある小さいやつが地蔵なんだろう...
なんて見とれていると、道路に無数落ちている落石にハンドルを取られて転けそうになる訳だが、、、
まさに動体視力検査である。。。
峠を越えて、篠ノ井・七二会(なにあい)という地域に当たると突然文明の登場、国道18号線にぶつかるわけである。
これだけ腹が減っているのにも関わらず、上越を出てから一度もコンビニ休憩ができないというのはまさに拷問である。
野尻湖を過ぎてから一度もコンビニに出会わなかったし。
R18沿いのセブンイレブンに行くと、参加者がイートインスペースで揃って死亡しているのが確認された。
国道沿いなのでいろいろな県外ナンバーのミニバン家族がコンビニに寄っているが、大学生が揃いも揃って目を充血させながら大量死していたら子供の教育に良くなさそうだ。
「将来あんな人たちみたいになっちゃダメだよ」とか言われてそう。
長野教育熱心な地域多いし。
コンビニで大量死が確認される一方、
ツイッターでは長野駅まで遠回りし、戸隠そばを優雅に楽しんでいる参加者もいることが確認され更に萎えていた...
これが資本主義社会が生んだ格差である。
茶臼山
一度は国道18号線に出たものの、また県道86号線に来てしまう。
マジで主催者鬼だろ。国道走らせてほしい。
だうそじん。
古文の教科書でしか見たことないけど、いまだにあるんやな。
茶臼山は頂上に行けば畑だったり集落が広がっていた。
おそらくそんな対した標高の山ではなかったのだろう、近くには動物園もあった。
PM3:50(+9:50) 茶臼山山頂
アニメーション映画に出て来そうな景色。
下に広がるのが上田市中心部。
山と山の間の盆地に無数に存在する人工物が美しい。
茶臼山から下りるとき、この大きな街が段々自分の視界に近づいてくるのが気持ちよかった。
この山から自転車でおりる地元住民もそこそこいて、自分の他に二台のチャリンコが降りていた。
ママチャリのブレーキをギィィィっと鳴かせながら。
平坦区間 上田盆地
篠ノ井駅。
ここからしばらくは平坦な道が続き、距離を稼ぐポイントだ。
国道18号線へ。
お気付きの通り、この国道18号線は上越市からずっと続いている国道だ。
この道を通って行けばすんなりこの長野市までこれたはずなのに、
わざわざ遠回りをして、山を二度も三度も上り下りしてきたのである。
長野県の間は千曲川で、新潟に入ると信濃川になる
そんなことを小学校の授業で教えられた覚えがある。
って思っていたら千曲市に入った。
PM4:42(7:42) 長野道 更埴インター
坂城(さかき)町
〇〇郡〇〇町という住所って、田舎にありがちなイメージが多いけれど
意外にショッピングモールやロードサイド街が充実していたりする。
実は地方中心都市のベッドタウンになっていたりするんだよね。
むしろ平成の大合併で無理やり統合させられた、××市(旧〇〇村)みたいなところの方が手付かずの自然が残っていたりする。
長野なのに珍しく、ずっと平坦な道が続く。
路肩も広くて、追い風が吹いているので距離を稼ぎやすかった。
坂城町はバラの生産が盛ん。
主に切り花用だそうだ。
このとき、上田城が一体どんなもんなのか、流石に国道から見えるだろとか思っていた。
頭の中で千本桜(花見の時期には上田城千本桜まつりが行われる)が流れていたのを裏切るかのように、信号待ちでショックな出来事が。
わずかな時間に調べたwikipediaの情報にひどく落胆した。
東京という文字が変にプレッシャーをかけてくる。
この国道18号線は軽井沢を経由し、群馬の高崎から国道17号線で東京に行く。
しかし私たちが向かっているのは静岡の浜松。
この時点で浜松なんて文字は一切看板に出てこない。
それは長野から浜松に行くルートがマイナーofマイナーだからね。
ロードサイド街を漕ぎながら、”なんだか丸亀製麺がある気がする”って呟いていたら、案の定現れた。
これからコンビニ空白区間、深夜の山に突入するため、
丸亀で特盛のうどんと巨大なかき揚げを食べていた。
ツイッターで調べると、各チームかなりの距離の差が開いていた。
前の集団はすでにこの先にある標高2000m級の山 美ヶ原を越え、諏訪湖にまできていると言う。
地獄の美ヶ原高原
うどんを食べ終わった頃にはすでに日は暮れていた。
国道152号線。この国道は上田市から浜松市にまで続いているためこの道をまっすぐ行けば最短でゴールできる。
けれど干からびランはそんな甘いもんじゃない。
ここから地獄が始まるのだ。
あ、そう言えば長野県のガソリンはクソみたいに高かった。
やっぱり海から遠いと値段上がるみたい。
県道62号。ここから美ヶ原(うつくしがはら)高原に向けてひたすら登るのだ。
ここが最後のコンビニ。カップ麺とレッドブルを体にぶち込んで...
駐車場で横になって寝ていた。
なんだかんだ今日夜通しオール状態だったからな。
目は真っ赤に充血し意識が飛びかけていた。
PM8:48(+14:48) 上田市武石入口
1時間くらい寝て(?)凍えながらようやく出発。
こんな時間に、自転車は皆無なのはもちろん、車の数も30分に一回見るか見ないかだった。
こんなに真っ暗なのに、時々温泉旅館の微妙なイルミネーションが不気味に照らしていたりする。
ぼくは眠気と寒さと体のだるさで、体力が消えかかっていたから、相方を必死に説得していた。
「やっぱり体力温存するためにゆっくり漕ごうな」
「去年の干からびランってさ...」
そう全てはコイツに置いていかれないように。
2つ下の男に置いて行かれないように必死に話しかける俺。プライドのクソもない。
というか、そもそもこのイベント、単独走行は主催者から禁止されている。
お前も人のこと言えねーじゃねーか!なんて声が出てきそうだが、一応常識の範囲内で定期的に待機しているし。。。
そんなことを考えていくうちに、あれ、
💫去年の悪夢の再来💫
隣にいたやつはグイグイペダルを回しにいく。
一方ぼくは、全く足が動かない。
おかしい。
段々と彼のテールランプが、暗闇の中に消えていった。。。。。。
PM10:08(+16:08) 美ヶ原高原入口 武石観光センター
巣栗渓谷・武石観光センターで左折をして県道464号線に入る。
夜の闇に入っていった彼は予想通りここで待っているわけでもなく、どこにも自転車の灯りらしきものはなかった。
道を間違えたのでは、という心配も募るも、電波は通じず連絡手段はない。
待てば待つほど引き離される可能性もある。
上田駅から600mほど登った標高1094mの地点で一度休ませてくれるかと思いきや、
ここが山道の入り口に過ぎず、ただただ途方に暮れていた。
休みたくても休めない
そんな状況である。
道路の両端は腐葉土、どこにも人工物はなく、自転車を立てかける場所もない。
斜度は先ほどのレベルとは比じゃなく、押して歩くにもアキレス腱を痛みつけられる。
おまけに風がビュービュー吹いていて、呼吸さえ苦しい。
道路の途中の温度計は1℃を指していた。
いや、ゴールデンウィークやぞ。
美ヶ原まで6kmという文字に安心するも、
いや自分が進んでいる速度がそもそも5km/hとかなのである。
漕げば、体全身の筋肉が攣りそうになるし、
降りて歩けば体全身が冷えていく。
スピーカーでラジオを流しても途中で電波が死んで無音になる(ならまだ最初から無音の方が楽)し、
寂しくなって彼女にかけてみるも、同じく何度も切れることにむしろ苛立ってしまった。逆効果。
諦めてitunesをアルバムごと再生にして、時間をなるべく忘れることにした。
ここまで標高が高いと動物の気配もないし、心霊現象が起きる気配も寒過ぎてないのである。
幽霊、寒すぎて死ぬ説。
怖いのは この猛烈な寒さ、強い風、果てしない暗闇、何もなさ過ぎて下界が間近に広がる高所恐怖的なやつ。
不思議だよね〜俺、いつもこの時間バリバリ バイトしているのに。
ちょっと長野の山に来れば怖くておうちに帰りたくなる。
ウルトラダウンジャケットの上にゴアテックスを着て、スキー用手袋をつけても風が強くて寒い。
結局この美ヶ原の山を登るのに4時間費やしてしまい、
深夜の1時になっていた。
上田の街は夜になると流石に暗い。
AM12:51(+18:51) 道の駅 美ヶ原高原美術館
頂上に行くと道の駅があるという情報はあったのでそこの屋根があるところに寝袋でも敷いて寝ようとか考えていた。
っていうか、流石に相方もそこで待っているんだろう。
誰もいなかった。
屈辱的だよ、相方どころかどこを探してもチャリンコなんていない。
そして休もうと思っても風をしのげるところなんてどこにもないんだぜ。立派な美術館はあるくせに。
なんて残酷なんだ、この世の中は。
結局寒さを凌げるところなんてトイレしかないわけで、トイレの個室に即座避難した。
本当に死んじゃうよ...死んじゃうよ...
トイレに目をつぶりながら温かい便座に1時間座っていた。
熊の子見ていた 干からびラン
浜松ついた子 一等賞
美ヶ原で また明日 また明日
いいな いいな 人間っていいな
1人で寂しく 自転車競争
あったかい便座で 眠るんだろな
僕も帰ろう おうちがないよ
絶賛 凍え死んで bye bye bye
きっとこの先の仮眠場所をどこかで探すべきなんだろう、
そう考えた自分はトイレの大便器個室の中で準備運動をし、
意を決して外に出た...!!!
扉の向こう側
吹雪
吹雪
5月ですよね...???
まぎれもない、氷の結晶が空から強風とともに運ばれてくるではないか。
こんな天気で走ったら滑って暗闇の深くに葬られてしまう。
すぐに元のあったかい便座に戻り、
足が痺れるのを覚悟で3時間くらい居座った。
そう言えば前回の干からびランも白樺湖(同じ山脈のところ)の多目的トイレで寝ているじゃないか。マジでビーナスライントラウマだわ。
二回連続、一番立ち止まってはいけない場所で夜を明かす。
あったかいウォシュレット便座(まじで日本のトイレって神だよな)で
ホッと一息つき、いつも聴いている金曜日の深夜のラジオ(やまだひさしのラジアンF)をつけながら、
自分を置き去りにした相方に10回くらい着信を入れておいたのであった。
後編に続く。